株式会社東光舎

岩手のモノづくり技術を世界へ~漆×南部赤松×ハサミのコラボで岩手の伝統と技術を世界の富裕層へ~

相談のきっかけ

理美容業界に限られていた販路を新たに開拓する必要
株式会社東光舎は、1955年以降、東京の板橋工場で生産を行っていたが、1981年に、岩手工場の創業を開始。その後、1989年に東京工場を閉鎖し、岩手工場に併合以来、理美容鋏専用の工場としては、日本最大級を誇り、最新設備を備えている。鋏の基礎研究から新製品の開発、製造までを一貫して行っている。「Joewell(ジョーウェル)」 のグローバルブランドで世界各国へ進出、現在では50ヵ国以上で販売され、世界中の理美容師に愛用されている。
これまでの販路はBtoB、理美容業界に限られていた。そこで、岩手の伝統工芸「漆塗り」のオリジナルの超高級はさみを海外の富裕層向けに販売したいと考え、1丁30万円程度の超高級ばさみを制作。海外向けにどのように売り込めばよいか、家族の晴れの日や記念日に使うような一生モノの家族の宝物として販売したいがどういう売り込みがよいか、アドバイスを求めてよろずを訪れた。

課題整理・分析

ターゲティングとブランディングの明確化
ジョーウェルは理美容業界では世界50か国に販売しているが、代理店販売が中心でBtoBの販路のみとなっている。また、国内で使われている漆の約98%は中国産漆で、国産はわずか2%。このような漆産業の復興を願い、漆の新しい可能性を広げていきたいという思いのもと、株式会社浄法寺漆産業がプロデュースする「葆光庵(ほうこうあん)」とのコラボプロジェクトとして「漆とハサミ」を通して、日本のものづくりの魅力を岩手県から世界へ発信したいということで漆塗のはさみを開発した。しかし、海外の富裕層向けに販売したいとECサイトで販売を開始したが受注に至っていない。一つ一つ手作業で仕上げる漆ばさみは「見せるはさみ」として透明なボックスに入れて販売するなどの構想はあるものの、価格帯や販売方法、ターゲット等が明確化されていないことが課題であると分析。

解決策の提案と実施

国内外の富裕層をターゲットとし、SDGsのコンセプトをしっかりと伝える
同社のはさみは、理美容業界では認知度、販売実績も高く、切れ味は抜群。メンテナンスすれば一生もののまさにモノづくり技術である。通常の数十倍の価格となる1丁30万円というはさみを販売するには、切れ味だけではなく、商品の持つコンセプト、漆とのコラボという魅力を訴求する必要がある。
現状のギフト箱はアクリル素材と紙でできており、せっかくのはさみの美しさを際立たせていないため、箱のデザインの見直しを提案。漆は、環境を汚染せず、再生可能で安全安心な優れた素材で、環境面での持続可能性を解決する素材として、SDGsの観点から注目されている。東光舎では、売上の一部を特定非営利活動法人ウルシネクストへ寄付し、国産漆の普及活動を支援している。「漆とはさみ」という新たな組み合わせにより、漆への注目度を上げ需要を拡大することで、漆産業の復興、そしてSDGsの達成へ貢献するテーマを明確化。箱についても、岩手、青森県南部地方を代表する南部赤松を使った箱にする事で、より自然と工芸品のとのコラボ性、環境保護への強い思いを発信するため、青森県の三八森林組合と連携し、新しいパッケージ開発に取り組むことになった。

支援の成果

漆×はさみ×南部赤松のコラボで超高級はさみとしての販売を開始
漆の美しさと南部赤松の木目の美しさを生かした専用箱の試作を重ね、箱自体も高級感があり、希少価値の高いはさみが完成。8月の東京ビックサイトで行われるWOODコレクションで三八森林組合が出品した際のバイヤーの意見も反映させた。最終商品は2024年2月にモナコで開催された「メイドインジャパンインモナコ」に出品。海外バイヤーからの評価も高く、高額商品ながら2丁を販売。さらに商談件数は新規10件以上と、今後の販路拡大に向けて前進した。

◎相談者の声

高級感のある箱に入れることでより、はさみの希少価値、ブランド力がアップした。海外での販路開拓、インバウンド向け販売の取り組みを本格化させていきたい。

◎岩手よろず支援のポイント

同社の新商品でもあり、三八森林組合としても新たなコラボ新商品となり、両者にとってメリットがある。また、コンセプトが同じベクトルを向くものでなければならないため、両者のブランドコンセプトや、販路拡大の方向性、企業理念等、しっかりと話し合い、また販売価格、販路等納得し、商品開発に取り組んだ。

担当コーディネーター小清水 貴子CO

株式会社東光舎
◎代表者名/代表取締役社長 井上 研司
◎住所/東京都文京区本駒込6-12-16
◎HPアドレス/https://www.joewell.co.jp/